言えないきもち(イラストと文
少し震える指先から
全ての気持ちが伝わってしまいそうで。
悟られたくなくて、でも解って欲しくて。
とくとくとく。と次第に早まる
胸の音を。
誤魔化す術を持ち合わせていない。
「、、、、、」
「、、なんだよ。」
頭上から降ってくる少しぶっきらぼうな声。
ああ煩わせたかな。と曇る心。
「、、だって。」
「だからなにが。」
「、、いい。」
自然溢れてきそうになる涙よ止まって。
何もかもを隠したくて、掴んでいたジャケットからそっと手を離そうとしたその時。
「おまえなあ、言わなきゃわかんねえだろうが。」
不機嫌さは変わらずだが、ギュッと掴まれた手のひらから伝わる温かさは、撩の体温そのもので。
なんでだろう。
ただこんなことだけで、あなたに全てを攫われてしまう。
「、、だって。」
「ん〜〜?」
「こんなの嫌なのに。」
「なんで?」
意地悪そうにからかい気味の声。
ああ。全て解ってる。と悟るも
そこから先はどうしても上手く紡げない。
言葉に出来ない代わりに、背中に更に深く顔を寄せる。
とくとくとく。
重なれ胸の音。と願いながら。
「全く、、香ちゃんもう少し素直になれよ。」
気がつくといつの間にかすっぽりと大きなうでに包まれて。
微かな硝煙の匂いに頭がくらくらするほどの心地よさに揺られ、ただひたすら包まれたくて。
ああ、ここにあるんだ。と実感する。
深く深く。
素直になんてなれる自信はないけれど。
こうやって必ず救い上げてくれるから。
だから今は差し出されたその手に心に
少しの自惚れを感じてもいいかな?
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