2021.03.09 05:08眠らない街で会いましょう (文「ちょっとはそこで頭冷やしてろ!」 肩を突かれて、店の外に追いやられると、乱暴に扉が閉まる音が響いた。赤や青や光の渦が汚いものも飲み込んでいく。こんな風に地べたに座り込み、片足からヒールが脱げかけていても、少しだけの関心を向けながらまた誰もが足早に過ぎていく。 流れる人の波をスローモーションのように感じながら、ぼんやりと眺めていると、綺麗に磨かれているハイヒールの先が視界の先に映り込んだ。「大丈夫...
2021.03.05 23:53溺れる魚は息さえ忘れる (文溺れる魚は息をする事も忘れるという溺れ、溺れてこのままと願う様が滑稽で、時に酷く残酷な言葉が舌をするりと滑り落ちていく日常茶飯事。通常運転切り抜けられるはずが、やけに焦燥感だけが増していく待っていたのは予想外の、冷水さながらの言葉だった「冴羽さん、右か左か選んで」あまりに唐突で、いきなり何だ。と、口に含んだ少し苦めのコーヒーを思わずごくりと飲み込む。「……なんだよ?」あまりいい展開にならないであろ...