2024.02.11 08:08拝啓 あなたへ 2(文 3.1加筆こんな事、起こるわけないって頭の中では非現実な目の前の光景が信じられない気持ちでいっぱいなのに、瞳の中に映る姿は夢でも幻でもなくて、ちゃんと此処に存在している。あたしより少し長い髪。でも同じ姿、同じ瞳。どう見たってあたしそのものだ。真冬の冷え切った気温が体を冷やしていくが、胸の辺りは早鐘を打つような鼓動で火照りさえ感じた。「……あっちのあたしって……」口からこぼれ落ちたのは当たり前の疑問。「そうだ...
2024.02.05 20:27拝啓 あなたへ 1不思議な事があるものだなって思った。「ねえ、聞いて」そう聞こえた。聞いた事があるような、不思議な感覚。耳に心地悪くは響かない。でも、少しの違和感。なんだろう、と振り向こうとすると、背中にふわっと体温を感じた。あたしは獠のツケを払った帰り道で。もう日が随分落ちて、急いで夕食を作らなきゃと頭の中でその日の献立を考えながら、馴染みのスーパーへと駆け足で向かっていた。晴れない心を抱えて。そんな時に不意に起...