2020.05.17 05:54消えた青空 4 (おわり 失くしたものは失くしたままならよかったのに感情は複雑すぎるときっと持て余してしまう飲み込まれそうになる揺られる獠の声が聞こえないことぼんやりと見えなくなっていくこととても怖かったけど、それよりももっと怖くて怖くて目も耳も塞ぎたかったものは何度も繰り返し見てきた光景獠の過去のこと過去のヒト平気なフリして、でも全然平気じゃなかった一コマ一コマが、奥多摩以降苦しくて苦しくて叫び出しそうで無理矢理蓋をし...
2020.04.11 11:55消えた青空 3「なんで?」「どうして?」「嫌だ!!」香の口から飛び出す言葉はこれから先を望むものは一つもなくて、らしくなく動揺したおれは思わず弱音を漏らした。「おまえのことがわかんねーよ・・」思えば奥多摩以降少しづつ壊れていったように思う。今までそこに在った光が次第に無くなっていることに気付く。香の中に在ったおれに向けられていた光が、熱が。ストレートな想いはいつからか消えていた。依頼が終わり、依頼人が胸の中に飛...
2020.03.29 22:14消えた青空 2 (文2月14日はとても寒い冬の日だった。いつものように朝から家事を済ませ、最後に獠の朝食兼昼食にラップをかけると、よし。と小さく呟きながら、腰で結んだエプロンの紐を後ろ手でシュルッと紐解いた。ひと声かけようかどうか一瞬思案してみたが、特別用事もないことだろうと顔を合わせずに出掛けることにした。特別必要ではないから。家族なんてそんなものなんだろうと思う。そういえば前に獠が言っていた気がする。プライベート...
2020.02.28 09:12消えた青空ある日あたしは落とし物をした。目に見えるものではないけれど。触れることもできないものだけど。すとん。と抜け落ちるように、心の中から消えていった。何故だろうそれは突然に訪れたふわふわと頭の中が自分ではないみたいに今までしこりになっていたものが、浮かんでは失くなっていく気がする。辛いことではなかった。むしろ気持ちが晴れていった。この感覚はいったいなんなんだろう見上げた空はやけに青く、見たこともない色を...