短編

漫画を描いてる途中ですが、イラストをちょこちょこ描いていたので、おはなしをつけて
みました(*´∇`*)
おはなし書くのは好きなんですが、絵を描くより時間がかかるので、かきかけのものばかりなのでコトコトやっていけたらなあと思います(*´-`)





「ねえ、少しだけ休んでいい?」

あまり綺麗とはいえない依頼の幕引きに
心底疲労感が募る。
人の欲というものはあんなにもその空間全てを歪ませてしまうほどの負の作用があるのか。

汚いものもたくさんみてきた。
綺麗事ばかりじゃないことだってわかっている。

「おまえ達だって変わんねーーよ!!あんたを守るために、そいつだって数えきれないほど汚いことをしてきたはずだ!」

最後の瞬間。
香から目を逸らすことなく感情の塊をぶつけながら、空を舞い自ら命の線を切った。

「見なくていい。」

放心するあたしを諭すように静かに獠が肩を抱き、歩みを促す。
こちらではなくあちらへ。
闇ではなく光へと。

悔しくて悲しくて、唇をきつく噛む。
ギリ。と深く食い込むたびに、口の中に
痛みの味が広がっていく。
こんなんじゃ獠の背負うものには追いつけないけど。

あたしならいいのに。
本当は一緒に半分づつ分け合っていきたいけど、それを望まないのは分かっているから。

歩みの先に広がる、少し開いた扉から差し込む月の光が、獠の左側半分をすっと照らし出して、思わず見上げると、優しい漆黒の瞳がそこにあって、締め付けられた胸と同時に肩を抱く獠の手が更に力強くあたしを引き寄せた。

「大丈夫だ。」

あたしは大丈夫だから。いつもこうやって獠
が守ってくれるから。
だけど、見せない右側半分で全てを引き受けていく獠はいったいどこで誰に守られているんだろう。

ばーか、そんなに弱くない。って
いつもみたいに髪の毛をわしゃわしゃされるのかもしれない。
だって、おれ強いもん。って
いつもみたいに茶化されるのかもしれない。

「獠は、、」
「うん?」

扉をくぐり月明かりの元に二人の帰りを待っていたかのように、クーパーが佇んでいる。
うちに帰れる。という安心感からか、香の体からふっと緊張感の類が和らいでいく。

獠はーー

「香?」 
クーパーに乗り込もうと香から離れた獠の
背中にとすん。と背を合わせる。
ぴくりと一緒緊張が伝わってきた。

「んだよ?どーした?」
「んー。」 

「ねえ、少しだけ休んでいい?」
「、、大丈夫か?」
「大丈夫。」
「そうか、、。あんなの気にすんじゃねーぞ。」
「うん。わかってる。」

獠の右半分も今だけはあたしに見せて欲しい。
こうやっていると分け与えてもらえるような気がして。

「あたしにだってちょっとは見せなさいよ。」
「あん?なにをだ?」 
思わず本音が漏れた。でもいいや。たまには素直にココロの声に乗っかってみよう。
「色々よっ。」
「色々ねえ、、」
ふーんといった調子で獠が曖昧な相槌を返す。
「まあ、、あたしじゃそんな気になれないかもしれない、、ケド、、」
普段培われた自信の無さが、香の発する声をどんどんトーンダウンさせていき、最後は消え入るような声へと変わっていく。

「見せてるよ。」
おまえにだけな。

都合のいい脳内変換が聞こえた気がした。
だけど、背中から伝わる温もりがそれでいいんだと優しく包んでくれている気がする。
「あ、あたしだけ?」
「、、、、」
「、、、、」
「月が綺麗だな。」

なによ唐突に。
またはぐらかされたと思ったケド。
何故だか穏やかな気持ちは少しも揺らがなくて。
獠の背中の心地よさにずっと包まれていたいとやっぱり願ってしまう。
 
「もっと強くなるから!」
「いや、それ以上強くなられるとおれ持たないかも。」
「ううん、大丈夫!きっとなって見せるから!」
「やっぱ、わかってねーよなあ、、」
背中越しに盛大なため息をひとつ獠が吐く。
「帰ろっか、獠」
「、、、おう。」

うーん。と大きく背伸びして獠の背中に深くもたれながら、気づかれないようにそっとその優しい背に頬を寄せた。







空から大事なもんが落ちてきた。
真っ直ぐにこの胸めがけて。

「獠!!」

気づくとその距離数センチ。
あと少しで鼻先と鼻先がコンニチワ。だ。
大切過ぎて、時々おれってば大丈夫か?と
おれの人格こんなんじゃないだろ。
と密かに頭を悩ませる存在が、名を呼びながらすごい勢いで落ちてくる。

「キャアア!!」
「うわっ!!」
シンクロした二つの声が、ドスン!!という
鈍い音と共にアスファルトに叩きつけられた。
「香っ!?」
両の手で受け止めたその存在が、もぞもぞと腕の中で蠢き、右手で握り拳を作りおれの胸を強く叩く。
「おい、香?」
思わず腕の束縛を緩めると、はあはあという息遣いと共に、涙目でこちらを睨みつけている。
「へ?香ちゃん?」
「あんたねえええ!!」
助けてやったのに睨みつけられてるなんて割に合わない。
「苦しいのよ!!!息できなくて死ぬかと思った。加減てもんがあるでしょうが!加減てもんが!」
必死の形相で喚きながら、両手で首元を掴みぐらんぐらんと揺らしてくる。
「や、やめろ!おま、、なあ!た、、すけて、、やった、、の、、に。」
「なに言ってるのかわかんない!!ちゃんと喋ろっ!」
ぐらんぐらん。

「うえっ。、、、喋れるか!!こんなに頭揺らされてアホになったらどーしてくれんだ!」
香の右手首を掴み、痛くない程度にくいと引き上げ、怒りで揺れるその勝気な瞳を真正面から捉える。
いつだってこの瞳はおれに真っ正直に向かってくる。

「で?なんでベランダから降ってきたんだ?」
「あ!そうだった!獠がいない間にねあいつらがやってきたから、トラップ作動させて二階に隠れてたの。そしたら抜け道見つけられて塞がれちゃってね。仕方ないから跳んだの。」
「って、、おまえなあ。二階からだって結構高さあるぞ。落ちてたらどうするんだよ。」
「だって獠がいたから。大丈夫ってえいっ。てね。」
なんの迷いもない表情でえへへと香が笑う。
馬鹿だな、おまえは
こんなおれを心底信用しきっている。
澄んだ青空のような透明な気持ちは、
時に酷く残酷で
どうしても交われない黒と白の境界線を
鮮明に浮き上がらせてくる。

それでも
それでもと願うから

あと少し
もう少しだけ

「獠!あいつらが来る!」
「ったく、こんなとこで騒いだら目立ちすぎて色々面倒だ。行くぞ、香。」
「うん!」

いつまでもおれの横で駆けていけばいいと
今日もまたそんな願いを一つ抱えて
ふわりふわりと癖のある髪が揺れる背中を
見失わないようにとアスファルトを蹴り上げた。









「香ちゃん、おはよう!」
「おはよう、源さん。」
「香ちゃん、おはよう。またよろしく頼むよ。」
「おはよう、のぶさん。うん。りょーかい。」
「香ちゃ〜〜ん!会いたかったわ〜!あのね、あのね、ちょっとお〜あたしの相談乗ってくれなあああい?」
「おはよう、チエコママ。えーと、、相談って?」
「あのね、あのね〜、あたしがあ〜やってる〜系列のお店で〜ホステ、、ぐあっ!!
な、なにすんのよ!りょーちゃん!!」
「獠!?」
「かおり〜腹減った。さっさと済ませて帰るぞ。」
「は、鼻取れるかと思ったじゃない!!
だからね、香ちゃん。ほんの一週間ほどでいいのよ。うちのーー。」
「やんねーよ。行くぞ〜香。」
「もう!ちゃんと話ぐらい聞いてあげなさいよ。ごめんね、ママ。またゆっくり聞くから。」
「、、、、」


「なにアレ?」
「あの獠ちゃんがなあ、、ずいぶん素直になったよな。」
「素直っていうか、ありゃちょっとしたストーカーだな。まあ前からだけどな。」
「もう!そんなに大事なら大事って言ってあげなさいよ。あんなんじゃ香ちゃんにはわかんないわよ。」
「確かになあ、、香ちゃんがもう少し獠ちゃんの気持ちに気づく子だったら、もっと早くまとまってただろうよ。」
「あら?香ちゃんは悪くないわよ。むしろあんな子貴重よ!き、ち、ょ、う!あんまり可愛いから、お店に置いておいてずっと抱きしめていたいわああ❤︎❤︎」
「、、ソレ、間違っても獠ちゃんの前で言っちゃダメだよ。」
「言わないわよ。」
「言いそうだから怖いんだよ!店、隣なんだからとばっちりはごめんだね。」
「そーだ、そーだ。」
「うわわ!やーね。これだから男っていざというとき保身ばかりで、、ブツブツ、、」
「「そういう問題じゃない!!!」


「あーら、見てよ。また香ちゃんの後ろで
威嚇してるわよ。こわ〜い。」
「あれ、向こうの角の店の黒服だろ?
そういえばこの前も香ちゃんに声かけてたなあ。ありゃ惚れてる目だね。間違いない。」
「あ、さりげなく触れたわね。見てよ。
あそこだけ空気違うわよ。一般人にあんなに殺気ダダ漏れしていいのかしら?
あ、でも全然気付いてないかも。あの子も天然かしら?」
「あいつ!おれ達の香ちゃんの手を取りやがった!」
「お?獠ちゃんがなんか言ってるぞ。ありゃ目が据わってるな。あいつ、震えてるじゃないか。ご愁傷様。」
「この街のルールをちゃんと把握してないあいつが悪いな、うん。辞めなきゃいいけどな、、」
「あ、香ちゃん捕獲されたわよ。やーね、男のやきもちなんてやだやだーー。」
「なんか揉めてるぞ。」
「あ、止まった。なんだ?香ちゃん俯いちゃってるけど、そろそろか?」
「あれ?」
「そう、アレ。」
「痛そうだよな。実際。」
「おれなら死ぬな。」
「ちょっとちょっと!なんか獠ちゃん固まってるんだけど。あれ見てよ!」
「「???」」
「「「あ!!!」」」
「、、、、、」
「、、、、、」
「、、、、、」
「あの自覚の無さが色々大変だよな、獠ちゃんも、、」
「下からの〜あの見上げてからの〜あの上目遣いはダメだろ。香ちゃん。わかってないとこがすごいよな、、」
「やだもーやだもー!だから言ったのよ!!
香ちゃんならうちのお店でいつでも人気ナンバーワンに、、て!なにすんのよ!あたしはまだねえ!香ちゃんに、、」
「はいはい、いーから。いーから。」
「おとなしく帰るの!」
「○▲❌!?□○✖︎✖︎✖︎〜〜」

「獠!りょー。りょう?おーい。」
「、、なんだよ?」
「聞いてる?」
「聞いてねえ。」
「なんだと!聞きなさいよ!!」
「あーもううるせえなあ。」
「、、じゃあうるさいのは退散するから。ご自由に。」
「、、そこまで言ってねーだろうが。」
「、、あのさ。」
「なんだよ。」
「手伝ってくれる?買い物。」
「なんでおれが。」
「じゃあいいけど。別に。」
「、、仕方ねえなあ。いっつもじゃねーぞ、
スイーパーが荷物持ちなんて。」
「ふふ。わかったから行こっ。トイレットペーパーがあたし達を待ってるよ!」
「はああああ!?なんでトイレットペーパーなんだよ!」
「今日は特売なの!!お一人様二つまでだから獠と行ったら4つ買えるでしょ?」
「、、そういやおれ、用事思い出しーー」
「だーーめ!行くわよ!!」
「、、さりげなく腕くんでくるなんて、香ちゃんも積極的になったなあ♫」
「、、何言ってんのよ、馬鹿じゃないの?」
「早く行かないとなくなっちまうぞ。」
「あ!そうだった!行こ!獠。」
「香ちゃん、顔真っ赤っか〜〜♫」
「うるさい、うるさい!!そうやっていっつもからかって、おもしろーー!?」
「行くぞ〜。」
「な、な、な、なんでっ、、、」
「おまえがどこにも行かないように。
、、なーんてな。」
「!!?、、、、ほんと、バカっ。」
「いてっ!急に強く握るなよ。」
「りょぉー。」
「んー?」
「離しちゃだめだよ。」
「、、こんなにがっちりされちゃ離せねーし。」
「あー早く行かなきゃ!獠!こっちこっち!」
「わあってるよ!」

「ーーーー。」
「ーーーー。」

そんなある日の日常。







無機質なドアの先に見えた光景が信じられなくて、頭の中が一瞬でスパークする。

なんで。
どうして今更。

あれから流れた季節は、悲しいぐらいに緩やかで。
一つ、そしてまた一つ季節を越えるたびに、
あたしという存在が薄れていくんだろうなと
痛む胸に一人泣いた。

そうやって何度も気持ちの振り幅が行ったり来たりを繰り返しながら、ようやく前だけ見て小さな小さな歩幅だけど、進んでいけると思っていたのに。

こんな風に視界に入ってきただけで
頑張れていたあたしの想いは、簡単に崩れていく。

なんだか少し痩せた?
髪が少し伸びた?
あたしが知らない間の獠を突きつけられているみたいで、体の震えが止まらなくなる。

「久しぶり。」
「、、、」

もたれていた壁から離れて、気づけばドアまで近づき、震えが止まらないあたしをじっと見下ろしている。
立っているのがやっとだけど、そんな弱さは見せたくない。

「香。」
かくん。と脚に力が抜け、思わずうずくまりそうになるのを獠の腕で掬い上げられる。
「アホ。なにやってんだよ。」
見上げるとその瞳はあの頃のままとても綺麗な漆黒の色で。
だけど、あたしが知ってる強くて揺るがない瞳はそこにはなくて、ただただ不安そうに揺れている。
「大丈夫か?」
大丈夫かなんて聞かないで。
大丈夫なわけないから。
大丈夫なら、きっと上手く笑えてたから。

「香?」
心配そうな声に答えなきゃ。と思うけど、
唇が思うように動かない。
伝えたいことはたくさんたくさんあるのに、
思い通りにならない自分の体に、腕の中でふるふると首を振りながら懐かしい匂いに、涙腺は崩壊寸前になっていく。

戻れるのかな。
帰れるのかな。
やっぱり願っちゃいけないことなのかな。

問いかけるように見上げた先には、今まで見たこともないぐらい穏やかな優しさが広がっていて、ゆっくりとその腕に閉じ込められた。








「ねえ、獠、あのね。」
「なーんだよ。」
「あたしと、、、」 
「おまえと?」

香の声が少し掠れている。
心地いい緊張が伝わってくる。

多分、多分だけどな。
こんなの前のおれだったら心底バカに
してただろうけど。

ココロノソコカラアイシタヤツガイレバ
ナニモカモガミタサレルンダヨ

昔どこかの誰かから聞いた言葉が
まさかおれのホントになるなんてな。

「あたしと、、」
「ずっとだろ?約束したもんな。」
「、、うん!」

天邪鬼と意地っ張りは最悪な組み合わせで。
随分と長い回り道をしたもんだと、長かった回り道の分、一度触れるとやめられない。

好きだけじゃきっと足りない
アイシテルでも多分届かない

額を合わせると本当に嬉しそうに笑うから
誰にも邪魔されない場所で
早く閉じ込めてしまいたくて
掠めるように唇を奪うと、
肩を抱き足早に家路へと急いで行く。




たくさんの大好きを。

CITYHUNTER(シティーハンター の二次創作で、イラストや時々漫画、たまには二次小説などをつらつらと置いている場所です。 その他、CH以外にも時々呟きます。 原作者様や公式関係者様には一切関係ありません。あくまで個人的な趣味の範囲のブログです(*´-`)

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